ヴァルナ国際バレエコンクールの紹介

インタビュー!ヴァルナ国際バレエコンクールVIPゲスト|左右木健一先生

2012年からヴァルナ国際コンクールの日本代表審査員に選出された左右木先生に、コンクールに関するさまざまなことについてお話いただきました。

ご自身もオーストリアのカンパニーで活躍をされていた25歳で同コンクールに挑戦され、ファイナリストとなられるだけでなく組織委員会賞を受賞されています。
「元・出場者」であり「現・審査員」の左右木先生に、審査の裏側からプロのダンサーとしての心構えまでをお話頂きました。
経験に基づかれたお話は、特にバレエをされる若い方に向けられています。
最後に、同時開催されているサマーアカデミーについてもご紹介いただきました。興味をお持ちの方はぜひ2014年に参加してみてください。

  • 人生のターニングポイント
  • 私はザルツブルグの州立劇場バレエ団でのシーズン5年目に、25歳で参加しました。年齢制限は26歳以下ですが、隔年開催のコンクールなので私にはラストチャンスでした。5年もたつと自分の可能性を模索したくなるんです。またネオクラシックのレパートリーが多かったので、一度クラシックのレパートリーを整理したいという気持ちもあって。
    ヴァリエーション6曲は用意できましたが、コンテンポラリーは時間がなくて自作自演をしました。評判はよかったらしくファイナリストに残れてディプロマをいただきました。ヴァルナは私の人生のターニングポイントです。

    ヴァルナに行くとものの価値観や人生観が変わる、と常々言っています。本当に変わるんですね。野外劇場は本当に特別なんです。舞台袖もないし、緞帳もない、上を見たら空だし。そこで自分が何を主張して表現していくかを考えるんです。
    また、雨が降るだけでも野外劇場では踊れなくなり体育館での審査になってしまう。私の場合も、第一ラウンドで雨が降り体育館での審査だったので、ここをどうにか突破して次に進まないと野外劇場では踊れなかった。そうすると「絶対最後まで残って野外劇場で踊りたい」という気持ちになるんです。
  • 20足のバレエシューズ
  • 野外劇場の舞台の床は簀の子(すのこ)みたいな木製で、表面はガタガタ(笑)。そして滑る場所もあれば滑らない場所もあります。特にトウシューズだと、すぐにだめになってしまう。決勝までだと8曲踊るので曲数の倍くらい必要と考えていたのですが、私が持っていった20足のバレエシューズは全部だめになりました。
  • 「気力・体力・根性」のコンクール
  • ヴァリエーションを6曲も用意しないといけないようなコンクールは他にないし、「難しい」、「大変だ」といわれているから、怖気付くこともあるかもしれません。でも私はもっといろんな人に挑戦して欲しいと思います。
    以前は落選しない限り宿泊費は必要ありませんでしたが今回から廃止されましたので、費用がかかることもヴァルナに出るのをためらう理由になるのかもしれません。コンテンポラリー2曲も自分の先生が振付けられればいいのですが、そうでない場合は誰か振付家を雇わないといけなくなります。


    例えばジュニアの16歳位でヴァリエーションを6曲用意するには、少なくても9歳くらいから毎年コンクールに出続けるか、もしくは一年くらいの間に6曲を完成させなければなりません。行ったとしても旧社会主義国の出身のダンサーが有利だと思っている方も多いですし、トウシューズは一回でだめになるし、飛行機の乗り継ぎ便が飛ばないとかね(笑)。海外にいればどれも驚くようなことではないし何とでもなるけれど、日本からお膳立てされて参加する方にとっては、こんなに大変なコンクールはないと思うでしょう。


    現地に到着した後も、スケジュールはいい加減ですしね。例えば審査は日没後の夜9時から深夜12時くらいに行われますが、その後行うリハーサルは、くじで最終の順番を引いてしまうと朝の4時くらいが目安となります。
    ちなみに私のリハーサルは朝の5時でした(笑)。3時くらいに順番がくると言われていたので、昼間休んで夜中の1時くらいに起きて、2時ころウォームアップして、というように3時のリハーサルに合わせて準備していたのですが、それから延々2時間待たされました。
    要はコンテンポラリーのために照明合わせをするんですが、規定の持ち時間はないんですね。納得いくまで何度でもやっていいんです。ほとんどの出場者は早く帰りたいから遠慮するんですけど、こだわっている国や出場者がいるといつまで待っても自分の順番がこない。

    だから昔からヴァルナのコンクールは「気力・体力・根性」が合言葉になっていますね(笑)。
    でもプロのダンサーとしてやっていくということであれば、それらは当たり前のことです。
    日本ではあんまりないけれど、ヨーロッパだったら、例えば深夜に舞台がはけたとしても朝のクラスには顔を出さなくてはいけなくて、その後延々とリハーサルをした後に本番がある日が何ヶ月も続くのが普通のことですから。だからヴァルナのスケジュールでへこたれるくらいだったらプロにはなれない、と私は思います。
    同様に(プロのダンサーなら)ヴァリエーションを6曲くらい踊れるのは当然のことだし、寧ろ1曲のヴァリエーションで何かを成せるとは思ったらいけない。今のバレエ界ではクラシックだけ踊れても生き残れないから、コンテンポラリーも2曲くらい踊れるのは当然のこととしないと。特に20歳を超えたら、遅くても年齢の上限の26歳になったらそれくらいの実力がないとプロのダンサーとしては厳しいと思います。

    ヴァルナではスカラシップもないし、いいものはいい、悪いものは悪いとはっきりさせるだけですから、特にシニアに関してはプロのためのコンクールと言われています。今回シニアで金賞を受賞したDenis Cherevichkoはウィーンの国立歌劇場バレエのプリンシパルで、もう一人のBrooklyn Mackもワシントンバレエのソリストです。Denisはサマーアカデミー(ワークショップ)にも毎日参加していました。そしてヴァルナに来た理由を「自分の可能性を模索している。プロとしてのルーティーンとは違うことをやりたい、挑戦したい」と語りました。要はもっと自分の芸術的な幅を広げたいということですね。私も同じように感じて出場を決めたので、やはりこのコンクールはそういうことに挑戦するためにあるのかな、だから権威があるといわれているのかなと思います。
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