ヴァルナ国際バレエコンクールの紹介

2016年 第27回 ヴァルナ国際コンクールの審査員に選出された今村先生に、コンクールに関するさまざまなことについてインタビューさせていただき、海外で活躍するダンサーやバレリーナを目指す子供達に向けてのメッセージをいただきました。

  • 審査員として見たヴァルナ国際バレエコンクールの印象などをお聞かせいただけますでしょうか。
  • ヴァルナのコンクールは本当に歴史があるコンクールで、プロの人たちのコンクールという印象がありますね。
    ローザンヌ国際バレエコンクールやYAGP(ユースアメリカグランプリ)は若い生徒さんを対象に、留学先等に紹介する為のコンクールだと思いますが、ヴァルナに関してはプロフェッショナルな人たちが自分のランクをもう一つ上げる為にしのぎを削る場所かと思いました。
    ですから、レベルとしてはとても高いです。
    おまけに第3ラウンドまで踊ると、古典6曲、コンテ2曲の計8曲を踊らなければなりません。
    それに対する大きなパワー、エネルギー、精神力が試される場であり、そういう意味では大変なコンクールでしょうね。
  • 8曲というのはどのくらいの期間で行われるのでしょうか。
  • 約2週間ですね。
    第1ラウンドで古典を2曲。
    第2、第3ラウンドでは古典2曲+コンテ1曲を踊らなければならず、全て違う作品でなくてはなりません。同じのはダメですよ。
    8曲踊ってチュチュを着て、となると衣裳を持っていくだけでも大変です。
  • シューズもたくさん用意して挑まなければならないとお聞きしております。
  • 木の床で、日本みたいにリノリウムを敷いているわけではありません。
    以前は床の状態も良くなかったのですが、今年はとても綺麗な床で、去年直したと聞きました。なので、今年は良い床で皆さん踊れたみたいでしたね。
  • 2週間という長い期間ですので、審査員の先生方も大変ではないでしょうか。
  • 大変は大変ですけど、出場者の皆さんが本当に真剣に取り組んでいる姿勢を毎回見せてくれると、私たち審査員もそれを見ながら勉強したり「なるほど」と思うような事もたくさんあります。
    特にコンテンポラリーになると古典では出せないような魅力が出てくる子もいますから面白かったです。
  • 出場者の中では古典よりコンテポラリーの方が得意なダンサーさんもいらっしゃったのですか。
  • そう見える人もいますけれど、もちろんそれはバレエの基礎があってこそですから。ちゃんとした基礎がないかぎりは踊れないですよね。バレエがベースになります。あとは表現力、強さ、存在感が、コンクールでの勝負になるような気がしましたね。
  • 日本人のコンテンポラリーのレベルは世界に比べてどうなのでしょうか。
  • あまり比べる必要がないくらい、同じくらいです。日本人だからコンテが下手だとか、そういったことは全然ないです。
    世界の壁というのは、ほとんど取られてしまったような感じがしますね。
    おまけに今回、日本人が上位に入っていたのも海外のバレエ団で踊っていたり、学校に通っている方ばかりでした。そういう意味では日本人だから、島国だから劣っているというのは全くないですよ。
    逆にヨーロッパの人が「最近アジアの方が、バレエが盛んで良いダンサーが出ているけれど、どうしてだ。」と疑問を持つくらいまでのレベルに来ていますよね。
  • 日本人の方が活躍されている、というのはすごく嬉しいです。
  • 本当に私も見ていて頼もしく思いました。
    ですがやっぱり、彼らが踊っているのを見ながらも、過去にヴァルナで踊った、元を作った日本の方っているじゃないですか。
    森下洋子さんが金メダルを取ったり、深川秀夫さんが最初に行ったりという、そういう歴史をとても感じましたね。
    だから、あの人たちが頑張ってくれたおかげで今の日本の子たちがここまで来られたんだなと、今回そういう思いがとてもありました。
    審査員にしても、友井先生とか越智先生とかずっといらしていて、それが続いて50年の歴史があります。そういう意味ではとても大事にしなければいけないし、とても権威のあるコンクールだという気がしましたね。
  • 日本人の活躍が近年増えてきたのは理由があるのでしょうか。
  • それはやっぱり日本の人達というのは、私達の時代もそうですけど、バレエに対する、西洋に対するコンプレックスというのがとてもあったと思いますよ。体型的な事も含めて。
    おまけにあちらに比べると、日本のバレエの歴史は短いです。
    そういう中で、それでもやっぱり私達はバレエが好きだから、ただ頑張る。そのただ頑張って続けてきた事が良い結果を生んだ。だから特別なことをしたわけでもなんでもないと思いますよ。
    日本人がもっている勤勉さとか、上を目指す向上心とか、そういう物がバレエの魅力について一生懸命頑張ってきた成果が今に現れて来ているのかなと。
    とくべつ日本人だからこういう訓練を、といった事はないじゃないですか。だけどそれは日本人が持っている良い性格というか、気質っていう物が日本のバレエをここまで高めて来たのかなと思います。
ヴァルナ国際バレエコンクールオフィシャルサイトへ