ヴァルナ国際バレエコンクールの紹介

前回2016年開催時に引き続き2018年 第28回 ヴァルナ国際バレエコンクールの審査員に選出された今村先生に、コンクールに関するさまざまなことについてインタビューさせていただき、海外で活躍するダンサーやバレリーナを目指す子供達に向けてのメッセージをいただきました。

  • 今回の入賞の決め手や、審査のポイントなどがあれば教えてください。
  • やっぱりこのコンクールは作品をいっぱい踊らなきゃいけないんですよ。だから決勝戦で踊る出場者は8曲も。コンテンポラリーもありますから。
    8曲踊らなきゃいけないから、一つ一つの作品でその子の個性を発揮して、ちゃんと規則正しく踊らないとダメですよね。他のコンクールもそうなんだけども。
    ここは特に曲数が多いから、一つずつ丁寧に踊っていかないといけないし、その加算で点数が上までつながっていきますから。
  • やっぱり基礎が大事ということでしょうか。
  • そうですね。 あとは舞台の上で踊る以上はプレゼンテーションというか観客に対するアピールとかそういう表現力というのが大事ですし、テクニックばっかりでは当然ダメなことで。
    最近の審査員は特にそれを感じていますよね。
    それから「あんなのはオリジナルにはなかった」って。実際に審査員がオリジナルの作品を踊ったような方とか、振り付けをしてもらったような人達だったり、キャリアのある人達がいますので「私がちゃんと教わった時は、ああじゃなかった。」って。
    それをやりやすいようにとか、見栄えが良いようにとか変えているんだけれども、「本当はそうじゃないよね。正しいことを私たちは伝えなきゃいけないね」って審査員の人達は声を大きくしていましたね。
  • 本来あるべき振り付けや、表現が審査のポイントにもなるのでしょうか。
  • うーん。それはまあ審査をする方の観点が色々違うと思うので、こればっかりだとは限らないけれども。
    しかしとても重要なポイントでしょうね。
  • やっぱり、やりやすいように変えてしまうのはちょっと良くないと。
  • それが良い方に変わるのは当然時代とともに必要とも思いますし、古いものを残しつつ、それをちゃんと現代に合ったような、みんなが納得するようなやり方で繋げていかないといけないでしょうね。
  • 前回のお話でもあったようにヴァルナはプロのためのコンクールで、他のコンクールと比べてそういったところもポイントになるのですね。
  • そうでしょうね。特にシニアになりますと実際バレエ団で踊っているような人たちが出場したりしていますからね。
  • 気になったダンサーさんはいらっしゃいましたでしょうか。
  • 今年は中国系。中国から来たダンサーもそうだし、海外にいる中国人の方が出場していたのが少し良い感じに見えてきましたね。
  • 日本人の方も入賞していましたが、印象はいかがでしたか。
  • 4人メダルを獲りましたよね。
    井関さんという方がたぶん一番年齢的に若い子ですよね。たしか16歳。年齢の割にとてもしっかり踊っていました。
    彼女と一緒に踊った銀メダルもらった五島くんという方もジュニアで出たんですよね。ジュニアで二人でパ・ドゥ・ドゥで出たの。ですから五島くんが、18歳なんだけれども、その年齢でちゃんとパートナーリングができていたので驚きました。
    私たちの時代なんかだと二十歳すぎないとちゃんと教えてもらえなかったし、できなかった。だけどそういう意味では、若い時期からそんなこともできるんだなと。
    年齢を考えると彼のパートナーリングにはちょっと驚きました。
  • パ・ドゥ・ドゥの技術が上がってきているということですね。
  • そうですね。
    もちろんソロのテクニックもきちんとしていて、ジャンプも良かったし、回転も上手だったし。
  • コンクールでパ・ドゥ・ドゥを審査するってあまりないように思います。
  • ないですよね。
    ヴァルナの場合はパ・ドゥ・ドゥで審査を受けても、それぞれに点数がつくんですよ。だから女性何点、男性何点という付け方をするので、二人は同点にはならないんですね。
    だから五島くんがシルバーで井関さんがブロンズになったりするんですよね。
    ただこの二人は、最後のコンテはソロでそれぞれ踊ったんですよ。それまでは二次のコンテはパ・ドゥ・ドゥのコンテだった。決勝戦では一人ずつでコンテを踊っていましたね。
    井関さんのコンテもとても良かったです。12歳くらいから海外に出て勉強しているんですよね。
  • パ・ドゥ・ドゥがあるっていうのもヴァルナの魅力の一つですよね。
  • そうですね。
    ですからシニアの方のパ・ドゥ・ドゥも、例の中国の方達のカップルもとっても良かったです。1位になった女の子も中国人の子でね。
  • 最近は中国の方の活躍が目覚ましいのでしょうか。
  • 目覚ましいというか、コンクールに対して送り込む力がすごいのかもしれない。
    たぶん中国のジュニアの子も、これから中国で売り出すみたいな子なんですよ。だから中国の方も彼女に対して、いっぱい力を貸しているみたいなんですよね。
    そういう見え方がしました。
  • バックアップがしっかりされているということですね。
  • そうなんですよね。だから日本も頑張っていかないと。
    やっぱり日本はどうしても個人が自分の力でやっているみたいなところが見えますよね。
    今回はそういうのも感じましたね。
  • 中国にもますます注目していきたいですね。
  • そう。以前は中国ってとっても京劇っぽい感じの中国のバレエだったのが、今回見た時、とてもインターナショナルになっていたので。
    それで先生方の教えも違ってきたからなのかなという気もしましたね。
  • 先程おっしゃっていた古典ならではの表現もできているということですね。
  • そうですね。古典に対してとてもピュアな感じが見えたので。
    スタイルはとても良いですよね。椅子の文化なんですよね。日本みたいな座りではないんですよね。
    日本の人達もずいぶん綺麗にはなっているんだけれども、スタイルとして、ちょっと劣るところが実はあるんです。
  • 日本人も最近は、昔と比べて体型が綺麗になってきたというイメージがありますが。中国は人口が違いますからね。
  • そうそう。その中から選りすぐりの人たちを選んでいるのだろうし。
    その辺りはやっぱり国の力を見せつけられたという気がしましたね。
  • 日本も頑張っていかないと。
  • でも日本の方たちも本当に良くやっていたんですよ。
    賞をとった子達も自分たちの力で一生懸命やって、精一杯踊っていてとても好感をもてたし。
    海外の皆さんも、日本のダンサーに注目していたし。嬉しいですね。
ヴァルナ国際バレエコンクールオフィシャルサイトへ