ヴァルナ国際バレエコンクールの紹介

前回2016年開催時に引き続き2018年 第28回 ヴァルナ国際バレエコンクールの審査員に選出された今村先生に、コンクールに関するさまざまなことについてインタビューさせていただき、海外で活躍するダンサーやバレリーナを目指す子供達に向けてのメッセージをいただきました。

  • 「世界中で繋がる」と言いますと、最近はインターネットも普及して、世界中のバレエやダンスの動画も観られるようになっていますね。
  • それがいけないんです。YouTubeバレエはいけない。
    生で観るバレエが大事です。それを観せたいっていうのが本当にバレエをやっている人たちの希望なんです。
    だから動画を観て覚えないで、生の舞台を観て感動する瞬間を世界中の人たちに味わって欲しいっていうこと。
    先日、うちのフィールドバレエの時にニーナ・アナニアシヴィリさんが来て、最後の2日間一緒に舞台をつくってくれたんですけど、やっぱり彼女もYouTubeバレエはとても嫌なんです。みんな劇場に来て、本物を観てもらいたいっていうことは盛んに言っていました。
  • 今はスマホなどで簡単に見れてしまいます。
  • それで子供達も順番を覚えて、なんとなく踊るんだけれど、バレエっていうのは実際に先生から直に教わって、作り上げなきゃいけない。ちょっとやり方が違ってきているんじゃないかって言っていますね。
  • 今村先生は様々な事業もされていて、八王子コンクールなどもされていますが。もちろんヴァルナコンクールと八王子コンクールは主旨が違うとは思いますが、ヴァルナコンクールの審査と八王子コンクールの審査とで見る違いとかはあるのでしょうか。
  • もちろん大きな違いはありますよ。
    八王子の場合はまだまだ若い学生さん達中心に見てあげて、バレエに対する夢だとか希望だとか、頑張らなきゃいけない事はこうですよ、ちゃんとしっかり勉強してくださいね、頑張りましょうねっていう応援の気持ちがとても多いですね。年齢的にも、とても低い子達が参加するコンクールだと思いますが、それを通して一つステップアップをしてもらえるようなところに繋がれば良いし。
    うちのコンクールの特徴としては、1位から3位までの上位入賞者は清里の舞台に出るんですよ。うちのフィールドバレエの前にエキシビションという時間があって、そこで踊ったりします。
    そこに出場した子達はとっても感動していて、なかなか野外で踊る機会もないし、バレエ団の人たちと同じ舞台に立つのは夢のようだみたいに言ってくれます。
    そういう事でも何か子供達がステップアップするためにお役に立てているのかなと思います。
  • やっぱり一流のための育成ということですね。
  • そうですね。全員がダンサーになるわけではないんですけれど、その時その時で一生懸命生きることの大切さだとか、何かつかむためには努力をし続けなければいけないということを感じてほしいです。
  • あとコンクールでは精神面も相当大事だと思われます。特に成果が出なかった場合とかはどのような心構えを持つべきでしょうか。
  • 難しいですね。心構えっていうのは人それぞれ違うことだし、その人が生きてきた歴史がその時の感情に繋がるわけだから。
    もちろん人それぞれ違うとは思いますけれど、とにかく目標を忘れずに続けることでしょうね。というのは続けないと答えは出ないですから。
    例えば、あまり良い成績が出なかったとしても続けるっていう事。夢、理想を高く持って進み続けなきゃ何も答えは出ないと思います。やめてはいけないです。
    バレエというのは自分が踊って幸せになるのではなく、最終的には観ているお客様を幸せにする仕事なんですよ。ダンサーというのは。
    ですから自分がそこで上手く出来なくてがっかりするよりは、お客様を幸せにするためには、自分はどう稽古をしていけば良いのか、どういう訓練をしていったら人を幸せにする舞台がつくれるのか、踊りが踊れるのかっていう事を考える時に、初めて彼らはアーティストになれる。きっと落ちて悩むのは競技者でしょうね。
    アーティストになって欲しいし、アートを目指して求めて劇場に行く、そういう人がいっぱい増えて欲しいです。
    成果が出なくても人を幸せにするダンサーになることが大事。観に行ったら幸せな気持ちでお客様は帰っていきたいでしょうし。
  • ちなみに精神面では日本人と海外の方で違いというのはあるのでしょうか。
  • 今はとてもインターナショナルになっていますから、日本人だからってという事はないと思います。
    若い人たちも、外国の方たちともとても自然に交流していますよね。
    ですから、あまり日本人だからってという事はだんだんなくなっていると思いますよ。
  • イメージでは海外の方の方がポジティブに考えて、日本人の方がネガティブに考えがちなイメージがあったのですが。
  • どちらかというと最近の若者は違うみたいですね。
    最近コンクールに行っているような若者たちと話をすると、昔の日本人とは違うなという感じがしますね。とてもインターナショナルになってきてるというか。
    例えばそこに日本人の持っている繊細さとか、奥ゆかしさとか、そういう独特なモノが日本人の感性にはあるじゃないですか。それは当然、彼らの中にもあるはずだから、それを失わないで日本人としての人間的な素敵さを残してもらいたいなって思います。
  • 最後になりますが、これからコンクールを目指すダンサーさんに向けて、どのような心構えで臨んでいけば良いのかメッセージなどをいただけますでしょうか。
  • 難しいことかもしれないけど、さっき申し上げたように「やり続けること、あきらめずに進むこと」それしかないですよね。本当に一歩一歩階段を登るようにしてバレエは上手になりますから。ちゃんと先生のご指導に従って、自分のメソッドではなくて、ちゃんと伝えられたモノをきちんと吸収して踊ることができるダンサーになってもらいたいし、コンクールにおいてもやっぱりお客様に観せることが大事ですから、客席に伝わる表現力の強さや何かは出てくる必要があると思います。

今村 博明 先生

井形久仁子バレエ研究所にてバレエを始める。1969年江川明に師事。74年バレエ協会公演『コッペリア』で主役デビュー。76年より2年間文化庁派遣芸術家在外研修員としてロイヤルバレエスクール留学。帰国後、牧阿佐美バレエ団入団、以来同バレエ団の男性第一舞踊手として内外で活躍する。数多くの作品に主演し、日本を代表するプリンシパルダンサーとしての地位を築いた。89年バレエシャンブルウエストを設立。古典バレエの復活上演、新作バレエの制作と意欲的な公演活動を展開している。橘秋子優秀賞、橘秋子特別賞、芸術祭大賞など多数受賞。

※写真提供:ヴァルナ国際バレエコンクール Facebook (https://www.facebook.com/varnaibc/)
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